スマートウォッチをつけて歩けば消費カロリーはリアルタイムで確認することができますが、運動強度の指標である「METs(メッツ)」の値を使えば、おおよその数値を計算式で求めることも可能です。
今回は、実際に私がスマートウォッチで計測した結果も交えて精度の検証をしてみました。
この記事では、さらに一歩踏り込み、スマートウォッチとMETs計算、それぞれの「仕組み」を解説し、ウォーキングや筋トレなど運動の種類によってどちらの数値を「目安」にすべきか、その「使い分け」までを徹底解説します。ダイエットや運動管理の参考にしてください。
【実測比較】Apple Watch vs METs計算(ウォーキング編)

私の普段歩く速度は、時速5.2km〜6.0kmぐらい。平均で考えると「時速5.6km」となり、これはMETs(メッツ)の単位で「4.3メッツ」に相当します。
▼METsを使った計算式で算出
この前提(4.3METs、体重66kg、時間0.5h)で計算すると、下記のようになります。
4.3 × 66 × 0.5 × 1.05 = 148.995kcal
計算式:METs × 体重(kg) × 時間(h) × 1.05
▼Apple Watchでの計測結果 一方、Apple Watchでの計測結果(下:写真参照)は、仮定のスピードよりはやや遅い速度(時速約5.2km)になりましたが、「143kcal」という結果でした。

結論:「ウォーキング」においては、数値は非常に近く、精度は高いと言えます。
| 歩く時間 (約30分) | |
|---|---|
| スマートウォッチ (Apple Watch) | 143kcal |
| METsでの算出 (4.3メッツ) | 148.995kcal |
実際には歩く環境(信号待ち、坂道など)が異なるため、消費カロリーが多かったり少なかったりする場合もありますが、数値がおかしいと言えるほどの誤差ではありません。
では、なぜスマートウォッチはこれほど正確に近い数値を推定できたのでしょうか? その「仕組み」を見ていきましょう。
スマートウォッチは「どう」カロリーを測っているか?
スマートウォッチが消費カロリーを測る際、最も重要な役割を担っているのが、手首に光る緑色のライト「光学式心拍センサー」です。
仕組み(簡易解説)
- 心拍センサーが、血流の変化を読み取って「心拍数」を計測します。
- 加速度センサーが、歩数や腕の振りなど「体の動き」を検知します。
- これら「心拍数(=運動強度)」と「動き」のデータを、ユーザー情報(年齢・性別・体重)と合わせて、メーカー独自のアルゴリズムで「活動カロリー」として推定しています。
ウォーキングは「動き」と「心拍数の上昇」が連動しやすい(速く歩けば心拍数も上がる)ため、スマートウォッチが最も得意とする運動の一つです。
だからこそ、先ほどの比較でもMETsの計算値と非常に近い、精度の高い結果が出たと考えられます。
METs(メッツ)とは?「平均的な」カロリー計算術

次に、比較対象となった「METs(メッツ)」について解説します。
メッツ(METs)とは
METs(Metabolic Equivalents)とは、運動で消費するカロリーが、安静時の何倍に当たるかを表す単位として、国際的な基準として使用されています。 座って安静にしている状態が 1 メッツ、時速4キロ程度の歩行は3メッツに相当します。
- 座位安静時・・・1メッツ
- 普通歩行・・・3メッツ
詳細については、国立健康・栄養研究所の公式サイトに改訂版「身体活動のメッツ(METs)表」が掲載されています。
消費カロリーの目安と計算方法
メッツ(METs)の数字を用いることで、下記計算式でおおよその消費カロリーを算出できます。
消費カロリーの求め方(計算式) メッツ × 体重(kg) × 時間(h) × 1.05
「1.05」という数字の意味は、安静時のエネルギー消費量を考慮する値(安静時による成人体重1kgにつき1時間あたりのエネルギー消費量)を表しています。
METsの限界
METs計算は客観的な指標ですが、あくまで「標準的な活動」を想定した平均値です。 例えば、同じウォーキング(3.5METs)でも、急な坂道を登った時の「個人のキツさ(心拍数の上昇)」や、体力差までは反映されない、という側面も持ちます。
シナリオ別:スマートウォッチとMETs、どっちを目安にすべき?

ウォーキングではどちらも信頼できる数値が出ましたが、運動の種類によっては「得意・不得意」があります。
① ウォーキング・ジョギングの場合
結論:スマートウォッチがおすすめ。
理由: METs計算では反映しきれない「坂道」や「ペースアップ」による個人のリアルな心拍数の変動(=頑張り)を、スマートウォッチは正確に反映してくれるためです。
② 筋力トレーニングの場合
結論:METs計算の方が目安になる(スマートウォッチは不正確になりがち)。
理由: 筋トレは、心拍数が上がりにくい割に筋肉への負荷が高い運動です。そのため、心拍ベースで計測するスマートウォッチでは、実際の負荷よりも消費カロリーが「過小評価」されがちです。
METs表(例:ウェイトリフティング 高強度 6.0 METs)で、大まかに計算する方が実態に近い場合があります。
③ ヨガ・ピラティスの場合
結論:METs計算の方が目安になる。
理由: ②と同様、心拍数が上がりにくい静的な動きが多いため、スマートウォッチでは過小評価される傾向があります。METs表(例:ヨガ 2.5 METs)を基準に計算する方が安定します。
④ 日常生活(家事・デスクワーク)
結論:スマートウォッチが便利。
理由: 「掃除機をかける(3.3 METs)を10分、料理(2.5 METs)を20分…」とMETsで細かく計算するのは非現実的です。着けているだけで総消費カロリーを推定してくれるスマートウォッチが圧倒的に便利です。
速度と消費カロリーの関係(推定値)
私の場合、普段歩く速度は、時速5.2km〜6.0kmぐらい。
平均で考えると「時速5.6km」となります。
これをメッツ(METs)という単位で考えた場合、「4.3メッツ」となります。
| 歩く (目安) | 速度 (時速) | メッツ (METs) | 消費カロリー (体重50kg) |
|---|---|---|---|
| とても ゆっくり | 3.2km | 2.0 | 52.5kcal |
| ゆっくり | 3.2〜 4.0km | 2.8〜 3.0 | 73.5〜 78.8kcal |
| 普通 | 4.5〜 5.1km | 3.5 | 91.9kcal |
| やや速い | 5.6km | 4.3 | 112.9kcal |
| 速い | 6.4km | 5.0 | 131.3kcal |
歩く場所は平坦な道のりを想定していますので、坂道や階段、信号待ちなどが含まれるとエネルギー消費量も増減します。

速度や時間、体重がそれぞれ異なれば消費カロリーも変わってきます。
メッツと体重から見る消費カロリー

下記は、体重が50kg・60kg・70kg・80kgの人が30分歩いた場合に消費するカロリーをメッツをもとに試算した結果表です。
消費カロリーの目安量(kcal/0.5h)
| メッツ | 50kg | 60kg | 70kg | 80kg |
|---|---|---|---|---|
| 3.0 | 78.75 | 94.5 | 110.25 | 126.0 |
| 3.5 | 91.875 | 110.25 | 128.625 | 147.0 |
| 4.3 | 112.875 | 135.45 | 158.025 | 180.6 |
| 5.0 | 131.25 | 157.5 | 183.75 | 210.0 |
体重50kgの人が普通の速度(3.5メッツ)で歩いた場合
(例:1)
体重が50kgのAさんが、普通の速度(3.5メッツ)で30分歩いた場合、消費カロリーは下記の通り。
3.5 × 50 × 0.5 × 1.05 = 91.875kcal
体重50kgの人がやや速い速度(4.3メッツ)で歩いた場合
(例:2)
Aさんの速度をやや速い(4.3メッツ)にした場合、消費カロリーは112.875kcalに上がります。
4.3 × 50 × 0.5 × 1.05 = 112.875kcal
私たちは「数字」とどう付き合うべきか

今回の検証で、スマートウォッチの精度は(特にウォーキングにおいて)高いことが分かりました。 しかし、その数字をどう活用するかが最も重要です。
- スマートウォッチの数値は「相対値」で見る 「今日の消費カロリーは2,500kcalだ!」と絶対値を信じ込むのではなく、「昨日より200kcal多く動けた」「今週は平均より高い」という日々の傾向(トレンド)を把握するために最適です。
- METs計算は「計画」と「補完」のために使う 「この運動を30分やったら、平均的には○○kcalか」という運動の計画を立てたり、スマートウォッチが苦手な筋トレなどのカロリーを補完するために役立ちます。
- 最強の答え合わせは「自分の体」 結局のところ、消費カロリーが摂取カロリーを上回っていれば体重は変化します。スマートウォッチの数値やMETs計算を参考にしつつも、最終的には「体重計の数値」や「鏡に映る体型」が真実です。
数値に振り回されず、自分の体と向き合うための「補助ツール」として賢く活用しましょう。
さいごに
今回はスマートウォッチで測る消費カロリーをメッツ(METs)での計算値と比較してみました。
私が普段使っているApple WatchやGarmin、Pixel Watch/Fitbitなどのスマートウォッチ(活動量計)の精度は、個人的には高いと感じています。 ただ、精度に関してはメーカーやモデルによって性能が異なるのも事実。 あくまでも計測機器なので、利用環境(汗や気温)や装着状態(ゆるみ)に左右されることも考慮する必要があります。
この辺に関しては、ある程度の許容を含めて利用することも必要かもしれません。
【参考文献】
・麻美直美、川中健太郎(編)運動生理学 羊土社
・関根紀子(編・著)運動と健康 放送大学教育振興会
・寺田新(著)スポーツ栄養学 東京大学出版会
【参考サイト】
・健康づくりのための身体活動基準2013」及び「健康づくりのための身体活動指針(アクティブガイド)」について 厚生労働省
・メッツ / METs(めっつ) e-ヘルスネット 厚生労働省
・改訂版『身体活動のメッツ(METs)表』 (独)国立健康・栄養研究所
※体重の数値は個人の平均値を利用しています。
※写真やイラストはイメージです。
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