Apple Watchで「ストレスチェックはできるの?」と時々聞かれます。
現時点(2023年5月1日現在)ではストレスレベルに関するスコアやグラフはないですが、
デバイスに搭載されたセンサーが検知するとマインドフルネス機能の利用を促してくれます。
心拍変動(HRV)などからアップル独自の検知システムでリマインダーが入る仕組み。
体感から言っても“ ピンポイント ”で正確に通知が入るので精度は高いと感じています。

ストレス対策も上手に使えば効果的!
※計測機種:Apple Watch 5(watch OS9)、iPhone SE3(iOS16)
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Apple Watchの心拍変動

Apple Watch の光学式心拍センサーは「光電式容積脈波記録法 (フォトプレチスモグラフィ) 」と呼ばれる方法を用いて心拍数を測定しています。
心拍変動(HRV:Heart Rate Variability)とは「心拍のゆらぎ」を意味します。
つまり、鼓動間隔(RRI:R-R Interval)の変化です。

心臓の鼓動間隔は状態によって、長くなったり短くなったりして常に一定ではありません。
この心拍変動の可変時間を捉え、Apple独自のアルゴリズムから検知していると考えられます。
心拍数 (HR) | 心臓の拍動数 |
心拍変動 (HRV) | 心拍のゆらぎ |
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心拍変動の計測方法

Apple Watchでは、心拍センサーで鼓動間隔の『標準偏差』によって心拍変動を計算しています。
鼓動間隔の標準偏差は、専門的に「SDNN(Standard Deviation of the NN intervals)」と呼ばれており、
『交感神経および副交感神経の両方を含む自律神経系全体の活動状態を表す指標』* を指します。
*Estimation of Stress During Car Race with Factor Analysis(東京大学 論文より)

ヘルスケアApp(心拍変動)の見方
心拍変動はiPhoneのアプリ『 ヘルスケア 』内で確認できます。
ヘルスケアAppを立ち上げて「 ブラウズ(右下)→ 心臓 → 心拍変動 」で下記の画面が表示されます。

参考のために、アプリの画面をスクリーンショットにとっておきました。

上記画面の期間は心拍変動の値が 平均 44ミリ秒で推移していることがわかります。
年齢や性別によって個人差があるため数値の良し悪しは一概に判断できませんが、私の場合、調子が良い時は平均 50msを超えていることが多いです。
心拍変動の正常値については、自身の計測結果の平均値を参考にすると良いかと思います。
※HRVによるストレスチェックはあくまでも参考程度として考えて下さい。
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Apple Watchで疲労度を知ろう

心拍変動( HRV )の変化から「からだのサイン」を知ることができる魅力があります。
目安としては、普段の平均値より低ければ疲労気味であり、高ければ回復傾向にあると判断できます。
- HRVが高い:
良好、疲労の回復傾向
・体力が十分な状態
・睡眠がしっかり取れている
・気分転換ができている - HRVが低い:
不調、疲労度が高い兆候
・体が疲れている?
・睡眠不足が考えられる?
・ストレスが高い可能性がある?
心拍変動の値は、ボディーバッテリー(体力ゲージ)の参考にできるため、パフォーマンスチェックにも応用できます。
※HRVは自律神経や呼吸はじめ、様々な外的要因も含めて変動するため状況によって変わる場合があります。

普段より心拍変動が低い状態が続いているようなら、しっかりと休息を心掛けましょう。
心拍変動の判断基準(本人の目安は40ms)
心拍変動の正常値(適正値)については非常に気になるので、色々な参考文献や論文等を調べてみました。
結論としては、やはり年齢や個人差があるので共通の答えはなかなか難しいようです。
よって、私の主観と心拍変動(HRV)の測定値を鑑みて、本人専用の目安表を作ってみました。
目安表(本人専用:40歳代 男性)
HRV値 | 目安 |
---|---|
60ms 以上 | 非常に良好 |
50〜59ms | やや良好 |
40〜49ms | 良好 |
30〜39ms | 普通 |
20〜29ms | やや不調 |
19ms 以下 | かなり不調 |
私の心拍変動の基準は『40ミリ秒(40 ms)』を指標としてセルフケアを心がけています。
ストレスや緊張、不安などへコーピングやマインドフルネスも並行して、数値を高めるための取り組みを実践中です。

ヘルスケアAppでは下記のようなグラフで確認できます。

心拍変動の平均値は年齢と共に低くなる傾向があるようです。よって、適正範囲を見つけ出すためにも、ある程度の期間は測定を続けてデータを収集する必要があります。
SDNNとRMSSDの違い
なお、Fitbit や Garmin でもストレスを測定するために心拍変動(HRV)が使われていますが、SDNN ではなく RMSSD(root mean square of successive differences)で算出されているので、また違った目安になるかと思います。
SDNN | SDNN は交感神経および副交感神経の両方を含む自律神経系全体の活動状態を表す指標 (RR間隔の標準偏差) |
RMSSD | RMSSD は副交感神経系の活動状態を表す指標 (隣接するRR間隔の差の二乗平均平方根) |
数値はあくまでも目安であるため、値が気になるようでしたら専門のかかりつけ医にご相談下さい。
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心拍変動と自律神経系(緊張とリラックス)

自律神経には「交感神経」と「副交感神経」があり、状況によってバランスが変化します。
緊張状態では交感神経が優位になり、リラックス状態では副交感神経が優位に。
これらの自律神経の働きを把握するために心拍変動による計測が使われています。
心拍変動の値が小さいということはストレスが高い状態で、逆に心拍変動の値が大きい時はストレスが低い状態です。
「緊張状態」と「リラックス状態」の違いを比較すると下記の通り。
緊張 | リラックス | |
---|---|---|
心拍変動 (HRV) | ゆらぎが 小さい | ゆらぎが 大きい |
ストレス | 高い | 低い |

緊張をほぐすためにマインドフルネス機能が搭載されています!
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さいごに

ストレスが原因で突発性難聴になった経験がある私にとって、ストレスチェック機能は非常に有り難いです。
普段、「イライラすることが多い」「寝ても気分がスッキリしない」といった方は、
スマートウォッチのストレス測定機能でチェックしてみるのも良いかもしれません。
ストレスに早く気づくことで、回避や対処ができる可能性が高くなります。
私は心電図アプリ対応機種 * を使っているので、iPhoneアプリ「心拍変動の分析・心電図アナライザー」も使用しています。
ご興味があれば、色々なデバイスやアプリのストレスチェック機能を試してみて下さい。
*心電図アプリ対応機種:Apple Watch Series 4、Series 5、Series 6、Series 7、Series 8、Ultra (2023年3月1日現在)
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▼参考サイト
・Fitbit 公式サイト https://www.fitbit.com/global/jp/home
・Garmin 公式サイト https://www.garmin.co.jp/
・Apple 公式サイト https://www.apple.com/jp/watch/
▼参考文献
・栄養科学イラストレイテッド運動生理学 麻美直美・川中健太郎(編) 羊土社
・第6版 補訂 基礎運動学 中村隆一・齋藤宏・長崎宏(著)医歯薬出版株式会社
・図解 眠れなくなるほど面白いストレスの話 ゆうきゆう(監修)日本文芸社
・ウェアラブル端末により検知した心拍変動に基づくストレス推定 鈴木伊織、佐藤文明(情報処理学会研究報告2020)
・心拍変動を利用した日常生活下のストレス値測定手法の検証 久保優希・小倉加奈代(情報処理学会インタラクション2021)
・呼吸法はなぜ健康によいのか? : 心拍変動バイオフィードバック法からみた自律神経メカニズムと心理学的効果 東海学園大学 学術情報リポジトリ 榊原雅人
・バイオフィードバックによる心理的指標への影響の概観と展望 東京大学 修士課程1年 下田茉莉子、修士課程1年 松本珠実、准教授 滝沢龍
※心拍変動の値が気になる場合は、かかりつけ医などにご相談下さい。
※写真やイラストはイメージです。